≪目次≫ |
1次変換によって,元の点(x, y)が新しい点(x', y' )に移されるとき,新しい点(x', y' )を元の点(x, y)の像という. 元の点(x, y)を新しい点(x', y' )の原像と言う.
【例題2.2】
(解答)(1) 次の行列の表す1次変換による,点(3, 2)の像を求めてください. (2) 次の行列の表す1次変換による,点(−2, −1)の原像を求めてください. (1) (8, −7)・・・(答) (2) となる(x, y)を求める. 連立方程式 4x+3y=−2
3x+2y=−1 を解くと, (x, y)=(1, −2)・・・(答) (別解) 後で登場する逆行列を用いた逆変換う使うと,次のように簡潔に書ける より (x, y)=(1, −2)・・・(答) |
1次変換によって自分自身に移される点(動かない点)を不動点という.
(1) どんな1次変換でも原点(零ベクトル)は不動点になっている.(原点は不動点である.)
(証明)
任意のに対して が成り立つからである.
(2) 行列によって表される1次変換に対して,原点(零ベクトル)以外の不動点が存在するための必要十分条件は
となることである.
(証明)
原点(零ベクトル)以外の不動点が存在するとは となるが存在するということ すなわち …(1)() もし,の逆行列が存在したら、すなわちならば、(1)に左からを掛けるととなることから,は原点(零ベクトル)でないという仮定に反する.したがって, …(2) は必要条件. 十分条件も満たすこと,すなわちのとき,だから (この式をジロっと見ると,実際に次のように原点(零ベクトル)でない解が存在することが分かる) ア)とする このとき は成り立つ. もし,ならばという条件を満たさないが,その場合は次のイ)のように決めればよい イ)とする このとき は成り立つ. もしア)イ)ともになるならば, となるから,平面上のすべての点が不動点となる. |
【例題2.3】
(解答)次の行列の表す1次変換によって,自分自身に移される点(不動点)を求めてください. (1) (2) (1) を解く ここで だから,左辺の係数行列には逆行列が存在する 原点(零ベクトル)のみが解となる…(答) (2) を解く より すなわち,の直線上の点はすべて不動点となる. |
【例題3.1】
(解答)(1) 点(3, 2)を(2, 3)に,点(4, 3)を(4, 1)に移す1次変換の行列を求めてください. (2) 点(5, 2)を(1, 2)に,点(7, 3)を(3, 1)に移す1次変換の行列を求めてください. (1) 求める行列をとおくと だから ・・・(答) (2) 求める行列をとおくと だから ・・・(答) |
【例題4.1】
(解答)1次変換f, gを表す行列を各々, とするとき (1) 合成変換を表す行列を求めてください. (2) 合成変換によって点(1, 2)は,どのような点に移されるか. (1) ・・・(答) ・・・(答) ・・・(答) (2) だから ・・・(答) |
【例題5.1】
(解答)行列で表される1次変換fの逆変換を表す行列を求めてください.また,fによって点(1, 2)に移される元の点を求めてください. ・・・(答) ・・・(答)
【例題5.2】
(解答)行列で表される1次変換gの逆変換が存在するかどうか調べてください.また,gによって平面全体がどのような図形に移されるか調べてください. だから逆変換は存在しない.・・・(答) により だから 平面全体はの直線に移される・・・(答) |
【例題6.1】
(解答)原点の回りに次の角度だけ回転する回転移動を表す1次変換の行列を求めてください. 30°, 45°, 120°, −60° ・・・(答) ・・・(答) ↑いつでも行列の成分に直せるので,この書き方もありです ・・・(答) ・・・(答) |
【例題8.1】
(解答)(1) 点P(x, y)から直線y=2xへの正射影を表す1次変換の行列を求めてください. (2) この1次変換によって点(5, 0)が移される点の座標を求めてください. (3) この1次変換によって,平面全体がどのような図形に移されるか調べてください. (1)…(答) (2)…(答) (3) より 変数をx, yで書くと,y=2x…(答) (当然のことながら,平面全体はy=2xの直線に移される) |
9. 対称移動
点P(x, y)を直線y=mxに関して(線)対称移動した点P’(x’, y’)の座標は
(解説)8.で求めたようにP(x, y)から直線y=mxへの正射影Q(x”, y”)は であり,点P(x, y)と求める点P’(x’, y’)の中点がQ(x”, y”)であるから …(1) …(2) (1)より (2)より |
【例題9.1】
(解答)(1) 直線y=xに関する対称移動を表す1次変換の行列を求めてください. (2) 直線y=−xに関する対称移動を表す1次変換の行列を求めてください. (1)…(答)
になり,x, y座標が入れ替わる
(2)…(答)
になり,x, y座標が入れ替わり符号も変わる
|
10. 直線の像と原像
【例題10.1】
(解答1)1次変換によって,直線がどのような図形に移されるか調べてください. 旧座標の関係式 …(1) 旧座標と新座標の関係式 …(2) から,新座標の関係式を求めるのが問題だから,旧座標を消去すればよい. この問題では,(2)の逆変換が存在するからこれを利用できる. (2)より …(2’) (2’)を(1)に代入 変数をにすると …(答) |
(別解1)
【逆変換が存在しない場合でも使える方法】
元の直線上に点(2, 0), (0, −3)がある.これらの点の像は「1次変換の線形性」(後で解説する)により,1次変換は「直線を直線に移す」(真っすぐな物が曲がることはない)ことを利用する.また2点が決まれば直線は決まるから,2点の像によって直線の像を求める. そこで,2点(4, 10), (−3, −9)を通る直線の方程式を求める. …(答) |
(別解2)
【逆変換が存在しない場合でも使える方法】
直線の方程式:媒介変数表示にして,直線の方程式をx,y座標に分ける. を媒介変数表示で表すと 1次変換 により 媒介変数を消去しての方程式にすると 変数をにすると …(答) |
(別解3) 直線の方程式: は,次の形に書ける これを行列で書けば …(1) 変換式には逆変換が存在するからこれを利用できる. …(2) (2)を(1)に代入すれば,x’, y’の関係式が得られる 変数をにすると …(答) |
【例題10.2】
(解答1)---◎[Best]1次変換によって,直線に移される元の直線を求めてください. 新しい直線の方程式が …(1) 新旧の変換式が …(2) であるとき,元のの間の関係式を求めればよいから,(2)を(1)に代入してを消去する …(答) (別解1)---2点の原像から求める 直線上の2点の原像を求める 逆変換の式 にを代入すると 2点を通る直線の方程式を求めると …(答) |
(別解2)---媒介変数表示で求める 直線を媒介変数表示に直すと これを逆変換の式 に代入すると から媒介変数を消去すると …(答) (別解3)---行列形式で書く 直線の方程式: は,次の形に書ける これを行列で書けば …(1) 変換式を(1)に代入すると …(答) |
非正則変換による直線の像
【例題10.3】
(解答)による1次変換について (1) 平面全体はどのような図形に移されるか (2) 直線はどのような図形に移されるか(は定数) (3) 直線に移される図形を求めてください (1) により 変数をにすると …(答[#1]) (2) 元の方程式を媒介変数表示で表すと @) これを に代入すると 媒介変数を消去すると 変数をにすると …(答[#2]) A) これを に代入すると 変数をにすると …(答[#3]) ※[#1][#2]の結果は,[#1]と整合的になっている.すなわち,平面全体が直線に移されるのであるから,その平面内にある直線も,当然,直線上に移される. (3) 変換式 新座標の方程式 から新座標を消去して旧座標の方程式にすると …(答) |
【例題11.1】
(高校数学Tによる答案)による1次変換について,不動点と不動直線を求めてください. ●不動点を求める 不動点の座標を(x, y)とおくと したがって (は任意) 不動点は,(は任意)…(答) ●不動直線を求める 不動直線の方程式を,・・・@(は,少なくとも一方は0でない)とおく の変換により,方程式が変わらないから ・・・A @Aの係数を比較すると が必要十分条件となる より 結局 不動直線は(は任意)…(答) (固有値,固有ベクトル,不動点,不動直線の関係)
(T) 0でない実数値に対応する固有ベクトルは
固有方程式を解くを満たすので,直線の方向が変わらず,原点を通る不動直線に対応する. (U) 特に,固有値に対応する固有ベクトルは を満たすので,各点は1次変換によって変わらず,不動直線にも不動点にも対応する. (V) が固有値となっている場合,原点を通らない不動直線が存在することがある. 右図のように,固有値に対応する固有ベクトルと固有値に対応する固有ベクトルがあるとき となるから,を通り,方向ベクトルに平行な直線が不動直線になる. ※なお,(重解)が固有値となっている場合にも,原点を通らない不動直線がある例は【例題11.4】参照 ア) のとき
は不動直線
イ) のときかつ,の直線上の各点は不動点
は不動直線
ウ) 原点を通らない不動直線を調べるとおくと だから となるから,点を通り,方向ベクトルに平行な直線は自分自身に移される. 媒介変数を消去して,の方程式として書くと 以上により 不動点は,の直線上の各点 不動直線は,,・・・(答) (はの直線でとすれば含まれる) |
【例題11.2】
(高校数学Tによる答案)による1次変換について,不動点と不動直線を求めてください. ●不動点を求める 不動点の座標を(x, y)とおくと したがって 不動点は,(は任意)…(答) ●不動直線を求める 不動直線の方程式を,・・・@(は,少なくとも一方は0でない)とおく の変換により,方程式が変わらないから ・・・A @Aの係数を比較すると が必要十分条件となる より の係数の,少なくとも一方は0でないから,としてとおくと 不動直線は(は任意)…(答) |
(別解)・・・固有値,固有ベクトルを利用して解く 固有方程式を解く ア) のとき
は不動直線
イ) のときかつ,の直線上の各点は不動点
は不動直線
ウ) 原点を通らない不動直線を調べるとおくと 媒介変数を消去して,の方程式として書くと は不動直線 |
【例題11.3】
(解答のみ)による1次変換について,不動点と不動直線を求めてください. 不動直線は,と 不動点は,直線上の各点
【例題11.4】
(高校数学Tによる解答)による1次変換について,不動点と不動直線を求めてください. ●不動点を求める ゆえに,の直線上の点はすべて不動点 ●不動直線を求める …(1) の形の不動直線があるとする. を代入して,元の直線の方程式を求める …(2) (1)(2)が一致するには よって,が条件となる. ここで,とおくと 不動直線の方程式は, |
...(携帯版)メニューに戻る ...(PC版)メニューに戻る |