== 整数の累乗と整除 ==
 このページでは,整数の累乗と整除について,次のような内容を取り上げます.(入試問題のレベルです)
(1) 24n−32n7で割り切れる
(2) 10n−7n−3n21で割り切れる
(3) 32n−1+42n−17で割り切れる
(4) 4×32n−1+24n28で割り切れる
(5) 12n−1+22n−1+32n−1+42n−15で割り切れる
(6) 3n−2n+34で割り切れる
(7) 33n+1+72n−111で割り切れる
(8) 3×24n+1−25×32n−121で割り切れる
 この教材で想定している学習方法
例題を見て(結果を覚えるのではなく),次の(A)〜(D)の方法を身に着けることが目標です.
【証明に使える方法】
(A) bn−anb−aで割り切れる.
(B) nが奇数のとき,bn+anb+aで割り切れる.
(C) 二項定理で展開する.(x+a)n=Kx2+nan−1x+an
(D) どれも思いつかないときは数学的帰納法
※剰余類に分類する方法もあるが,割る数が大きいと分類が多過ぎて大変になる

(1)
すべての自然数nについて,24n−32n7で割り切れる
(解説)
■因数分解による証明■
f(x)=xn−anのとき,f(a)=0だから,因数定理によりf(x)x−aで割り切れる.
詳しく書けば,xn−an
=(x−a)(xn−1+xn−2a+...+x2an−3+xan−2+an−1)

したがって,bn−anb−aで割り切れる.
元の問題は,16n−9nと書けるから16−9=7で割り切れる.
** 実際に割ってみると **
16−9=7 → 7÷7= 1 余り 0
256−81=175 → 175÷7= 25 余り 0
4096−729=3367 → 3367÷7= 481 余り 0
65536−6561=58975 → 58975÷7= 8425 余り 0
……
なお,このような具体例は,イメージ作りには役立つが,どこまでやっても数学的な証明にはならない.上記の茶色で書いた部分が証明.
■数学的帰納法による証明■
 「すべての自然数について...が成り立つことを証明せよ」という形の問題は,多くの場合,数学的帰納法によって証明できます.
 ただし,数学的帰納法による証明は,何にでも使える代わりに「結論が分かっている場合だけ」です.
 次のような形の問題には使えません.
 「すべての自然数nについて,24n−32nが割り切れるような定数が存在するかどうか調べよ.」
 さらに,新しい問題を作ることもできません.
(T) n=1のとき
24n−32n=24−32=16−9=77で割り切れる
(U) n=k (k≧1)のとき
24k−32k=7KKは整数)と仮定すると
n=k+1のとき
24(k+1)−32(k+1)=16×24k−9×32k
=16×(7K+32k)−9×32k
=16×7K+16×32k−9×32k
=16×7K+(16−9)×32k
=16×7K+7×32k
=7×(16K+32k)7で割り切れる
以上のT,Uにより,すべての自然数nについて7で割り切れる

【類題1】 すべての自然数nについて,次の関係が成り立つことを証明してください.
(1) 44n−52n3×7×11で割り切れる
(2) 54n−72n26×32で割り切れる
(1)
44n−52n=(44)n−(52)n=256n−25n
は,256−25=231=3×7×11で割り切れる.
n=1のとき,44n−52n=231だから,これよりも大きな定数で割り切れるものはない
(2)
54n−72n=(54)n−(72)n=625n−49n
は,625−49=576=26×32で割り切れる.
n=1のとき,54n−72n=625だから,これよりも大きな定数で割り切れるものはない
上記の答案だけでは証明にはなっていないので,自分で因数分解とか数学的帰納法を使って証明する必要がある.証明は前述の例に準じて書けばよい.

(2)
すべての自然数nについて,10n−3n−7n21で割り切れる
(解説)
■因数分解による証明■
f(x)=xn−anのとき,f(a)=0だから,因数定理によりf(x)x−aで割り切れる.
したがって,bn−anb−aで割り切れる.
A) これにより,10n−3n10−3=7で割り切れると言える.
さらに,7n7で割り切れるから,結局,10n−3n−7n7で割り切れる.
B) 次に,10n−7n10−7=3で割り切れると言える.
さらに,3n3で割り切れるから,結局,10n−3n−7n3で割り切れる.
以上のA)B)において3, 7は互いに素だから,元の問題は,3×7=21で割り切れる.
実際には,10nは偶数で,3n+7nも偶数だから,さらに2でも割り切れて,2×3×7=42で割り切れます
※一般に
(a+b)n−an−bna×bで割り切れます
が,a, bとも偶数,a, bとも奇数の場合は,さらに2でも割り切れますが,偶数と奇数の組み合わせでは,a×bまでになります.
a, bに最大公約数(G>1)がある場合には,Gでも割り切れます.
※しかし
(a+b+c)n−an−bn−cna×b×cで割り切れるとは言えません.
■二項定理による証明■
n=1のときは明らか.
n≧2のとき
10n−3n−7n
=(3+7)n−3n−7n
=3n+nC13n−1×7+...+nCn−13×7n−1+7n−3n−7n
=nC13n−1×7+...+nCn−13×7n−1
=21(nC13n−2+...+nCn−17n−2) (n−2≧0)
21で割り切れる.
■数学的帰納法による証明■
(T) n=1のとき
10n−3n−7n=10−3−7=021で割り切れる(商が0で余りが0)
(U) n=k (k≧1)のとき
10k−3k−7k=21KKは整数)と仮定すると
n=k+1のとき
10k+1−3k+1−7k+1=10×10k−3×3k−7×7k
=10×(21K+3k+7k)−×3k−7×7k
=210K+(10−3)×3k+(10−7)×7k
=210K+7×3k+3×7k
=21(10K+3k−1+7k−1) (k−1≧0))
21で割り切れる
以上のT,Uにより,すべての自然数nについて21で割り切れる
類似の問題として,次のような関係を証明することができます.
【類題2】
(1) すべての自然数nについて,24n−11n−13n143で割り切れる
(2) すべての自然数nについて,29n−4n−25n100で割り切れる

(3)
すべての自然数nについて,32n−1+42n−17で割り切れる
(解説)
■因数分解による証明■
f(x)=xn+anのとき,f(−a)=(−a)n+annが奇数ならば0になり,因数定理によりf(x)x+aで割り切れます.
しかし,nが偶数ならば,この話は成り立たないので,一般にはxn+anx+aで割り切れるとは言えません.
指数が奇数の場合に限定して,この形を使うと
x2n−1+a2n−1x+aで割り切れます.
f(x)=x2n−1+a2n−1のとき
f(−a)=(−a)2n−1+a2n−1=−a2n−1+a2n−1=0だから,因数定理によりf(x)x+aで割り切れる.
したがって,b2n−1+a2n−1b+aで割り切れる.
元の問題では,32n−1+42n−13+4=7で割り切れる
類似の問題として,次のような関係を証明することができます.
【類題3】
(1) すべての自然数nについて,52n−1+42n−19で割り切れる
(2) すべての自然数nについて,72n−1+42n−111で割り切れる

(4)
nを自然数とするとき 4×32n−1+24n28で割り切れることを示せ.
(東京女子大2005年入試問題)
(解説)
■因数分解による証明■
前述の(3)で述べたように,x2n−1+a2n−1x+aで割り切れます.
f(x)=x2n−1+a2n−1のとき
f(−a)=(−a)2n−1+a2n−1=−a2n−1+a2n−1=0だから,因数定理によりf(x)x+aで割り切れる.
したがって,b2n−1+a2n−1b+aで割り切れる.
元の問題では,32n−1+42n−13+4=7で割り切れる.
そこで,両辺に4を掛けると
4×32n−1+42n7×4=28で割り切れる.
すなわち
4×32n−1+24n28で割り切れる.
一般に,b2n−1+a2n−1b+aで割り切れるから,両辺にaを掛けると
a×b2n−1+a2na(b+a)で割り切れる.
類似の問題として,次のような関係を証明することができます.
【類題4】
(1) すべての自然数nについて,9×52n−1+34n9×(9+5)=126で割り切れる
(2) すべての自然数nについて,3×42n−1+32n3×(3+4)=21で割り切れる

(5)
nを自然数とするとき 12n−1+22n−1+32n−1+42n−15で割り切れることを示せ.
(解説)
■因数分解による証明■
前述の(3)で述べたように,x2n−1+a2n−1x+aで割り切れます.
f(x)=x2n−1+a2n−1のとき
f(−a)=(−a)2n−1+a2n−1=−a2n−1+a2n−1=0だから,因数定理によりf(x)x+aで割り切れる.
したがって,b2n−1+a2n−1b+aで割り切れる.
元の問題では,12n−1+42n−11+4=5で割り切れる.
また,22n−1+32n−12+3=5で割り切れる.
結局
12n−1+22n−1+32n−1+42n−15で割り切れる.
※実際には,12n−1+42n−1は奇数なので5KKは奇数)とおけます.また,22n−1+32n−1も奇数なので5LLは奇数)とおけます.
したがって,元の問題は,5(K+L)K, Lは奇数)となって,K+Lが偶数だから,10の倍数になります
※この問題を数学的帰納法で証明することはできますが,「証明できてもあまりうれしくない」.
すなわち,力仕事になってしまって,全体の規則性が見えてこない.(もっとうまい変形があるのか?)
類似の問題として,次のような関係を証明することができます.
【類題5】
(1) すべての自然数nについて,
112n−1+122n−1+132n−1+142n−111+14=12+13=25で割り切れる
(2) すべての自然数nについて,
12n−1+32n−1+62n−1+112n−121で割り切れる
1+6=7, 3+11=14だから7で割り切れる.
また,1+11=12, 3+6=9だから3で割り切れる.
37は互いに素だから,3×7=21で割り切れる.

(6)
すべての自然数nについて,3n−2n+34の倍数である.このことを数学的帰納法を用いて示せ.
(愛知教育大2016年入試問題)
(解説)
■数学的帰納法による証明■
(T) n=1のとき
3n−2n+3=3−2+3=44の倍数
(U) n=k (k≧1)のとき
3k−2k+3=4KKは整数)と仮定すると
n=k+1のとき
3k+1−2(k+1)+3=3×3k−2(k+1)+3
=3(4K+2k−3)−2(k+1)+3
=12K+6k−9−2k−2+3
=12K+4k−8=4(3K+k−2)
4の倍数
以上のT,Uにより,すべての自然数nについて4の倍数
※一般に,二項定理を用いると,次のことが言える
(k+1)n−kn−1
=kn+nC1kn−1+...+nCn−2k2+nCn+1−1k−kn−1
=kn+nC1kn−1+...+nCn−2k2
k2で割り切れるから
(k+1)n−kn+(k2−1)k2で割り切れる
類似の問題として,次のような関係を証明することができます.
【類題6】
(1) すべての自然数nについて,4n−3n+842で割り切れる
(2) すべての自然数nについて5n−4n+1552で割り切れる

(7)
すべての自然数nについて,33n+1+72n−111の倍数である.このことを数学的帰納法を用いて示せ.
(愛知教育大2016年入試問題)
(解説)
■数学的帰納法による証明■
(T) n=1のとき
33n+1+72n−1=34+71=8811の倍数
(U) n=k (k≧1)のとき
33n+1+72n−1=11KKは整数)と仮定すると
n=k+1のとき
33(n+1)+1+72(n+1)−1=27×33n+1+49×72n−1
=27(11K−72n−1)+49×72n−1
=27×11K+(49−27)×72n−1
=27×11K+22×72n−1
=11(27K+2×72n−1)
11の倍数
以上のT,Uにより,すべての自然数nについて11の倍数
※一般に,bq≠apのとき
(bq−ap−1)apn+bqn=(bq−ap)apn+bqn−apn
=(bq−ap)apn+(bq)n−(ap)n
となりますが,このページの先頭の因数分解で示したように,後半は(bq−ap)で割り切れるため,全体は
=(bq−ap)apn+(bq−ap)M
=(bq−ap)(apn+M)
となり,bq−apで割り切れます.
 元の問題に戻ると,a=3, b=7, p=3, q=2とすると
(72−33−1)33n+72n=21×33n+72n72−33=22で割り切れます.
 さらに,21×33n+72n22と互いに素な7でも割り切れるので,3×33n+72n−1=33n+1+72n−122で割り切れることになります.(当然11でも割り切れます)
類似の問題として,次のような関係を証明することができます.
【類題7】
(1) すべての自然数nについて,16×23n+52n17で割り切れる
(2) すべての自然数nについて,43×34n+53n44で割り切れる
(3) すべての自然数nについて,99×35n+73n100で割り切れる

(8)
すべての自然数nについて,3×24n+1−25×32n−121の倍数であることを示せ.
(解説)
■数学的帰納法による証明■
(T) n=1のとき
3×25−25×31=96−75=2121の倍数
(U) n=k (k≧1)のとき
3×24k+1−25×32k−1=21KKは整数)と仮定すると
n=k+1のとき
3×24(k+1)+1−25×32(k+1)−1=27×33n+1+49×72n−1
=27(11K−72n−1)+49×72n−1
=27×11K+(49−27)×72n−1
=27×11K+22×72n−1
=11(27K+2×72n−1)
11の倍数
以上のT,Uにより,すべての自然数nについて11の倍数
 ※一般に,
(a2+b)a2n−1−2abn
=a2a2n−1−abn+ba2n−1−abn
=a(a2n−bn)+ab{(a2)n−1−bn−1}
において,因数分解のところで示したようにa2n−bna2−bで割り切れ,(a2)n−1−bn−1a2−bで割り切れるから,元の式はa(a2−b)で割り切れます.
 この式において,a=3, b=24とおくと
25×32n−1−6×24n
すなわち
25×32n−1−3×24n+1
3×(32−2)=21で割り切れます.
a, bの値の組合せによっては,途中で負の数が登場する場合がありますが,割り切れたら気にしない.
類似の問題として,次のような関係を証明することができます.
【類題8】
(1) すべての自然数nについて,4×34n−85×22n−12×7×11=154で割り切れる
(2) すべての自然数nについて,8×34n−97×42n−122×5×13=260で割り切れる


≪チェックテスト≫
※問題は,このページで解説した項目の順に並んでいます.詳しい解説が必要な場合は,このページの対応する番号の解説を見てください.
【問題】 選択肢の中から正しいものを1つクリック
(1)
すべての自然数nについて,34n−72n(1) で割り切れる
2 4 32 40
(2)
2以上の自然数nについて,12n−5n−7n(2) で割り切れる
(次の選択肢のうちで正しいものをクリック)

(3)
nが正の奇数であるとき,11n+13n(3) で割り切れる
(該当するもののうちで最大の整数をクリック)
6 12 18 24
(4)
すべての自然数nについて,7×24n−2+72n(4) で割り切れる
(該当するもののうちで最大の整数をクリック)
7 14 28 77

(5)
nが正の奇数であるとき,6n+7n+8n+14n(5) で割り切れる
(該当するもののうちで最大の整数をクリック)
5 7 12 35
(6)
すべての自然数nについて,7n−6n+35(6) で割り切れる
(該当するもののうちで最大の整数をクリック)

(7)
すべての自然数nについて,40×8n+49n(7) で割り切れる
(該当するもののうちで最大の整数をクリック)
7 14 41 70
(8)
すべての自然数nについて,19×24n−2−8×3n(8) で割り切れる
(該当するもののうちで最大の整数をクリック)

■顔が引きつるジョーク■
 1980年の日本医大入試で次のような問題が出されたことがある.(誘導問題ありの3問目)
nを自然数とするとき,2450n−1370n+1150n−250n1980で割り切れることを示せ.
(参考答案)
2450n−1370n2450−1370=1080=23×33×5で割り切れる.
1150n−250n1150−250=900=22×32×52で割り切れる.
したがって,元の数は22×32×5で割り切れる.
また,2450n−250n2450−250=2200=23×52×11で割り切れる.
−1370n+1150n1370−1150=220=22×5×11で割り切れる.
したがって,元の数は22×5×11で割り切れる.
結局,元の数は22×32×5×11=1980で割り切れる.
出題者としては,娯楽の少ない受験生にわずかばかりのジョークを提供した配慮かもしれないが,受け取った受験生には,にっこり笑って解けるような問題ではなく,顔が引きつっていたかもしれない
 2020年の大学入試で次のような問題を出したら,柳の下のドジョウがねらえる.
nを自然数とするとき,2138n−1138n+1037n−17n2020で割り切れることを示せ.
(参考答案)
2138n−1138n2138−1138=1000で割り切れる.
1037n−17n1037−17=1020で割り切れる.
したがって,元の数は20で割り切れる.
また,2138n−17n2138−17=2121=101×21で割り切れる.
−1138n+1037n1138−1037=101で割り切れる.
したがって,元の数は101で割り切れる.
結局,元の数は20×101=2020で割り切れる.

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