■平方剰余
【例1】
a, b, cが正の整数のとき,a2+b2=c2ならば,a, bの少なくとも1つは3で割り切れることを示してください.
(全体の見通し)・・・≪鉛筆遊びで戦う!≫
3で割った余りの一覧表
x 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
x2 1 1 0 1 1 0 1 1 0 1 1 0 1 1
 3で割り切れない数の2乗の和を3で割った余りは,1+1=2になる.
 しかし,どんな正の整数cをもってきても,c23で割った余りが2になることはない.
 以上の内容を数学の答案風に作文すればよい.
(解答)
 正の整数cの2乗を3で割った余りは
(1) c=3kならばc2=9k2=3Nだから余り0
(2) c=3k±1ならばc2=9k2±6k+1=3N+1だから余り1
ただし,k, Nは整数
以上により,どんな正の整数cについても,その2乗を3で割った余りが2になることはない.…(A)

 一方,a, bの両方とも3で割り切れないとき
a, b=3m±1, 3n±1となるから,
a2+b2=3M+1+3N+1=3(M+N)+2
ただし,M, Nは整数
となるからa2+b23で割った余りは2になる.…(B)

(A)(B)は矛盾だから,a2+b2=c2のとき,a, bの両方とも3で割り切れないことはない.すなわち,a, bの少なくとも1つは3で割り切れる.
【例2】
a, b, cが正の整数のとき,a2+b2=c2ならば,a, b, cの少なくとも1つは5で割り切れることを示してください.
(全体の見通し)・・・≪鉛筆遊びで戦う!≫
5で割った余りの一覧表
x 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
x2 1 4 4 1 0 1 4 4 1 0
 表によりa, b, cとも5で割り切れない場合は,
(1) 1+1 → 2となることはできない
(2) 1+4 → 0となることはできない
(3) 4+4 → 3となることはできない
 以上の内容を,数学の答案風にまとめるとよい.
(解答)
(1) a=5m±1, b=5n±1のとき
a2+b2=5M+1+5N+1=5(M+N)+2となるが,どのようなc=5p±1, 5p±2を持ってきても c25で割った余りは,1,4となり,余りが2となることはない.
(2) a=5m±1, b=5n±2またはa=5m±2, b=5n±1のとき
a2+b2=5M+4+5N+1=5(M+N+1)となるが,どのようなc=5p±1, 5p±2を持ってきても c25で割った余りは,1,4となり,余りが0となることはない.
(3) a=5m±2, b=5n±2のとき
a2+b2=5M+4+5N+4=5(M+N+1)+3となるが,どのようなc=5p±1, 5p±2を持ってきても c25で割った余りは,1,4となり,余りが3となることはない.
以上により,a, b, cとも5で割り切れない場合は,a2+b2=c2にならない.

【例3】
a, b, cが正の整数のとき,a2+b2=c2ならば,a, b, cの少なくとも1つは4で割り切れることを示してください.
(全体の見通し)・・・≪鉛筆遊びで戦う!≫
4で割った余りの一覧表
a 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
a2 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0
 すべて4で割り切れないとき,a2, b24で割った余りは
0+0=0 → あり得る
0+1=1 → あり得る
1+1=2 → あり得ない
これでは,すべて4で割り切れないとき,4で割った余りが等しくならないと言い切れない.

 そこで,”解像度”(数学用語ではない.俗な言い方!!)を上げて8で割った余りで分類すると,次のようになる.
8で割った余りの一覧表
a 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
a2 1 4 1 0 1 4 1 0 1 4 1 0
 すべて4で割り切れないとき,a2, b28で割った余りは
1+1=2 → あり得ない
1+4=5 → あり得ない
4+4=8→0 → あり得ない
 そこで,8で割った余りで分類して,答案をまとめるとよい.
(解答)
 a, b, cとも4で割り切れないとき,
(1) a, bとも8で割った余りが1,3,5,7のいずれかであるとき,a2+b2=8M+1+8N+1=8(M+N)+2c2=8L+2は,あり得ない
(2) a, bの一方は8で割った余りが1,3,5,7のいずれか,他方は2,6のいずれかであるとき,a2+b2=8M+1+8N+4=8(M+N)+5c2=8L+5は,あり得ない
(3) a, bとも8で割った余りが2,6のいずれかであるとき,a2+b2=8M+4+8N+4=8(M+N+1)c2=8Lは,あり得ない
以上により,a2+b2=c2が成り立つときに,a, b, cとも4で割り切れないと矛盾を生ずるから,a,b,cのうち少なくとも一つは4で割り切れる.
【例4】
自然数a, b, cについて,等式a2+b2=c2が成り立ち,かつa, bは互いに素とする.このとき,次のことを証明せよ.
(1) aが奇数ならば,bは偶数であり,したがってcは奇数である.
(2) aが奇数のとき,a+c=2d 2となる自然数dが存在する.
(京都大学)
(全体の見通し)・・・≪鉛筆遊びで戦う!≫
2で割った余りの一覧表
x 1 2 3 4 5 6 7 8 9
x2 1 0 1 0 1 0 1 0 1
aが奇数のときに,bの奇数ならば矛盾を生ずることを言えばよいのであるが,・・・
上の表では1+1=2 → 0もあり得る(cが偶数ならば受けられる)ことになって矛盾を示せないので,”解像度”(数学用語ではない.俗な言い方!!)を上げて4で割った余りで分類すると,次のようになる.
4で割った余りの一覧表
x 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
x2 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0
 
(1)  abも奇数のとき,4で割った余りは(上の表により)
1+1=2
となって,どんな自然数cを持ってきてもc24で割った余りは2にならないから,矛盾.
 したがって,bは偶数
 aが奇数,bが偶数のとき,a2+b2は奇数になるから,c2は奇数,したがってcは奇数になる.

(2) (「a,bは互いに素」という条件をどう使うか,それが問題だ)
 a2=c2−b2=(c−b)(c+b)
だから
c−b=p2
c+b=q2
p, q1,奇数の素数またはそれらの積で,互いに素)とおける.
152+82=172のような場合に152=172−82=9×25において
c−b=3
c+b=3×25
のように分けると
b==3×12, a=3×5
となって,「a,bは互いに素」という仮定に反する.
このとき
c=, a=pq
だから
a+c= =
ここで,p, qは奇数だから,p+q=2dとおける.
a+c= = =2d 2

【問題5】
 【例4】に次の小問を追加した場合,すなわち
自然数a, b, cについて,等式a2+b2=c2が成り立ち,かつa, bは互いに素とする.
(3) aが奇数のとき,次のうちでつねに成り立つものを選んでください.
(筆者が練習問題として追加したもの)


1b+c=k2となる自然数kが存在する
2b+c=2k2となる自然数kが存在する
3b+c=3k2となる自然数kが存在する
4b+c=4k2となる自然数kが存在する
5b+c=5k2となる自然数kが存在する




[ポイント1]==ド・モルガンの法則==
 (少なくとも1つは ・・・である)の否定は(すべて・・・でない)

[ポイント2]==背理法==
 「ある命題が成り立つ」ことを示すには「その否定から矛盾を示せばよい」

 【例1】では,「両方とも3で割り切れない」と仮定すれば矛盾を生ずるという構造になっています.

(参考:前提の働き)
○ P:a, b, cは正の整数」,Q:a2+b2=c2」,R:a, bの少なくとも1つは3で割り切れる」とするとき,もとの命題が
PかつQ)ならばR
であるとき,これを対偶を用いて証明するには
ならば(または
を示す必要があります.
ならば(Pかつ
ならば(かつQ
ならば(かつ

の3通り考えられます.

○ これに対して,
PのときQならばR
の形の主張では,Pは前提といわれ,これが成り立たない場合
を考える必要はありません.
だから「PのときQならばR」の
「逆」を示したいときは
PかつR)ならばQ
「裏」を示したいときは
Pかつ)ならば
「対偶」を示したいときは
Pかつ)ならば
を示せばよく,Pは常に仮定の側に入れてよいことになります.

○ 特に,「PのときQならばR」を背理法で示すには,その否定
PかつQかつ → 矛盾
を示せばよいことになります.

【問題1】
a, b, cが正の整数で,a2+b2=c2のとき,次のうちでつねに成り立つものを選んでください.

1a, b, cのうち少なくとも1つは奇数
2a, b, cはすべて奇数
3a, b, cのうち少なくとも1つは偶数
4a, b, cはすべて偶数



【問題2】
a, b, c, dが正の整数で,a2+b2+c2=d 2のとき,次のうちでつねに成り立つものを選んでください.

1a, b, c, dのうち少なくとも1つは3の倍数
2a, b, c, dはすべて3の倍数
3a, b, c, dのうち少なくとも1つは3の倍数でない
4a, b, c, dはすべて3の倍数でない



【問題3】
nを正の整数とするとき,n26, 7 ,8, 9で割ったときの余りについて,正しいものを選んでください.

1余りが2になることはない
2余りが3になることはない
3余りが4になることはない
4余りが5になることはない



【問題4】
a, b, cが正の整数で,a2+b2=c2のとき,次のうちでつねに成り立つものを選んでください.

1ab15の倍数になる
2ab24の倍数になる
3abc48の倍数になる
4abc60の倍数になる



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