== 微分係数,連続,微分可能 ==
【微分係数の定義】…数学U,数学Vで登場する
…(1)
…(2)
0 x a+h h a A P H
(1)はの値がからまで変化するときの平均変化率

の値を,として限りなく近づけたときの極限を表している.
 平均変化率

は線分の傾きだから,として限りなく近づけると,極限値は点における接線の傾きになる.
(1)を,すなわちとおいて書き換えたものが(2)である.
(1)と(2)は同じものであるが,約分などの計算をするときは,(2)の方が見通しがよくなることが多い.
数学Uでできる微分係数の応用問題
【例1】
 関数において微分係数をもつとき,次の極限値をなどを使って表してください.

≪考え方のポイント≫
…(1)
の形が使えるように,足したり引いたりします.
A P a x f(a) f(x)
 そのとき,分子の2つの式が同時に変化すると,微分係数の定義式に当てはめられないので,右図の緑の〇,青の〇に対応する式を「つなぎ」にします
(解答)

(←緑色の経路)

(別解)

(←青色の経路)

(参考)
最初から最後までを付けて変形していくのが煩わしいとき,途中経過はすべて平均変化率として単なる分数計算で行い,最後だけ極限をとる書き方もあります.



【問題1.1】
 関数において微分係数をもつとき,次の極限値をなどを使って表してください.

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【問題1.2】
 関数において微分係数をもつとき,次の極限値をなどを使って表してください.

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【問題1.3】
 関数において微分係数をもつとき,次の極限値をなどを使って表してください.(ただし,とします.)

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【ここまでの問題に対する類題と答】
 関数において微分係数をもつとき,次の極限値をなどを使って表してください.
(1)

(2)

(3)

(4)

(5) 関数において微分係数をもつとき,次の極限値をなどを使って表してください.



【問題1.4】
 関数において微分係数をもつとき,次の極限値をなどを使って表してください.

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【問題1.5】
 関数における微分係数が存在するとき,

を用いて表せ.
(2005年福岡教育大)
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【連続の定義1】
…(1)
が成り立つとき,において連続という.
詳しく言えば
【連続の定義2】
が有限確定値であること…(1.1)
が有限確定値であること…(1.2)
それらが等しいこと…(1.3)
の3つとも成り立つとき,において連続という.これらのうち1つでも成り立たなければにおいて不連続という.
さらに詳しく言えば
【連続の定義3】
(1.11) 左側極限値が有限確定値であること
(1.12) 右側極限値が有限確定値であること
(1.1)
左側極限値と右側極限値が等しいとき,その値を極限値という.(左右の極限値が等しくなければ極限値が存在しないという)
(1.2) 関数値が有限確定値であること
(1.3) 極限値と関数値が等しいこと
の5つとも成り立つとき,において連続という.これらのうち1つでも成り立たなければにおいて不連続という.
に限りなく近づく極限を考えるときに
の値をとりながら近づく場合との値をとりながら近づく場合とで異なる場合には分けて考え,右側極限値,左側極限値で表します.  分けるまでもなく右側極限値と左側極限値が一致するときは,分けずに単にを示せばよい.
 の場合は,と書きます.
(解説)
【連続の定義1】を詳しく書いたものが【連続の定義2】なので,この詳しい方を解説します.
 次の図(A)〜(D)において,中塗りの赤で示した点は,における「関数値」を表しています.この値は,を代入したもので,の周囲の様子とは無関係に決まります.
 これに対して,白抜きの赤丸で示した点は,のときの「極限値」を表しています.この値は,のときの関数値とは無関係で,の周囲の様子によって決まります.
 そのそも,「極限値」は,でない値をとりながら,限りなくに近付くときにが近づく値と定義されています.したがって,「極限値」を考えるときに,が前提です.だから,「極限値」にとっては,の周囲の様子だけで決まり,「関数値」とは無関係です.
 次の図(A)(B)では,において,中塗りの赤で示した点と白抜きの赤丸で示した点は一致します.図(A)(B)はにおいて,連続な関数の例です.
a (A) 2
a (B) 0

 次の図(C)(D)(E)では,において,中塗りの赤で示した点と白抜きの赤丸で示した点は一致しません.図(C)(D)(E)はにおいて,不連続な関数の例です.
a (C) 2 3
a (D) 2 1

a (E) 0 1 2
a (F) 0

 (C)では極限値,関数値のいずれも存在しますが,これらが一致しないので不連続です.
 (D)では関数値は存在しますが,右側極限値と左側極限値が一致しないので,極限値が存在しません.したがって不連続です.
 (E)では関数値が定義されていません.したがって,不連続です.(右側極限値と左側極限値が一致しない,すなわち極限値が存在しないから不連続とも言えます.)
(E)のようににおいて,関数が定義されていないような場合,連続も何もそもそも議論ができないという立場もありますが,高校では(E)のように1点を除いて周囲のすべての点で定義されていて,その点でだけ定義されていない場合も,不連続とすることが多い.
(F)はのグラフで,の区間では定義されていません.このような関数では,そもそも左側極限値は初めから考えないので,右側極限値と関数値が一致すれば右側連続という.

【例2】
(2.1)
について,において連続かどうかを調べてください.
a (A) 2
(解答)
関数値は代入するだけで求まる
…(*)
極限値は

…(**)
これらが一致するから,連続
(*)は代入したものだから,すぐ分かるが,(**)の極限値をていねいに計算すれば


とすればよいが,多項式,指数関数,対数関数,三角関数などは分母が0になる場合など「特定のあやしい箇所」を除けば定義域において連続であることは教科書に書かれているから,極限値の計算の代わりに関数値を使ってもよい.上記の(**)の計算は関数値の計算と同様に単位代入しただけのものである.
(2.2)
について,において連続かどうかを調べてください.
a (B) 0
(解答)
関数値は代入して求める

極限値
ア) のとき
だから


イ) のとき
だから


ア)イ)より

だから
が成り立つ.よって,連続
(2.3)



について,において連続かどうかを調べてください.
a (C) 2 3
(解答)
関数値は代入するだけで求まる

極限値は



だから不連続
(2.4)



について,において連続かどうかを調べてください.
0
(解答)
関数値は代入して求める

極限値
ア) のとき
だから


イ) のとき
だから


ア)イ)より
右側極限値と左側極限値が一致しないから,極限値が存在しない.ゆえに,不連続

(2.5)
について,において連続かどうかを調べてください.
1 0
(解答)
そもそも関数値が定義されないから不連続
右側極限値
のとき


は分母→+0,分子→−1だから,−∞
左側極限値
のとき


は分母→−0,分子→−1だから,+∞
これらが一致しないから,極限値が存在しない.よって不連続ともいえる
(2.6)



について,において連続かどうかを調べてください.
1 0
(解答)
のとき

のとき


だから

したがって連続
(2.7)
をこえない最大の整数)について,において連続かどうかを調べてください.
1 0
(解答)
関数値

右側極限値
のとき


左側極限値
のとき


これらが一致しないから,極限値が存在しない.よって不連続(図のように右側連続であるが左側連続でない.結局,連続でない)
(2.8)

について,において連続かどうかを調べてください.
1 0
(解答)
初項がで,公比がの等比級数だから
ア) のとき

イ) のとき
公比はだから,この等比級数は収束し,その和は



だから不連続

【問題2.1】



について,において連続かどうかを調べてください.
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【問題2.2】



について,において連続かどうかを調べてください.
解説を読む

【連続の定義1】
…(1)
または
…(1’)
が成り立つとき,において連続であるという.
【微分可能の定義】
…(2)
または
…(2’)
(2)または(2’)で定義される微分係数が存在するとき,関数において微分可能であるという.
【連続と微分可能の関係】
(A)微分可能ならば連続である
(B)連続であっても微分可能とは限らない
(C)不連続ならば,微分可能ではない
(A)の解説
a (A) 連続で微分可能
関数において微分可能であるとき,

が成り立つから



となり,において連続である.
(B)の解説
a (B) 連続で微分不可能
例えば関数は,において連続であるが,
右側微分係数


左側微分係数


このように,左右で微分係数が一致しないから,
微分係数は存在しない.
一般に,折り目のあるグラフ(かどのあるグラフ)は,その折り目で「連続である」が,左右の微分係数が一致しないから「微分係数は存在しない=微分可能ではない」
(C)の解説
 論理的な証明だけなら,対偶を使うと簡単に示せます.
 すなわち(A)「微分可能ならば連続である」の対偶により(C)「不連続なら微分可能でない」が証明できたことになります.
1 (C1) 不連続
 ここでは,さらに図形的な意味も考えてみます.
において不連続である関数では

であるから,微分係数の計算式において

分母→0のときに分子は0に近付かないから,この極限値が存在しないことになる.
 例えば,図(C1)で,



の場合を考えてみると,

のときは∞に,のときは−∞になります.
 不連続点で極限値と関数値に「ギャップ」があって,それらが一致しないとき,右図のようにのときにとなって,傾きの値が±∞になり,微分係数が定まりません.
a (C2) 不連続

 図(C2)のように,右側だけが連続となっている場合,
右側微分係数は定まりますが,左側微分係数

となって,左右の微分係数が一致しないから,微分係数は存在しません.

【例3.1】
 関数について,における連続性と微分可能性を調べてください.
y x 0 1
[連続性]


だから連続…(答)
[微分可能性]


ア)のとき

イ)のとき

ア)イ)より,微分係数が定まらないから微分不可能…(答)
一般に,折り目(かど)のあるグラフでは,折り目の点で「連続」であるが「微分不可能」になる
【例3.2】
 関数について,における連続性と微分可能性を調べてください.
y x 0 1 -1 ,/g>
[連続性]



だから


したがって,連続…(答)
[微分可能性]
ア)のとき

イ)のとき

ア)イ)より

微分可能…(答)
一般に,「なめらかな」「つるつるの」グラフは,「連続」かつ「微分可能」になる

【例3.3】



について,における連続性と微分可能性を調べてください.
0 (B)
※この問題は【例2.4】で述べたものと同じ問題です.
(解答)
関数値は代入して求める

極限値
ア) のとき
だから


イ) のとき
だから


ア)イ)より
右側極限値と左側極限値が一致しないから,極限値が存在しない.ゆえに,不連続
[微分可能性]
不連続だから,微分不可能です.
一般に,「跳びがある」「ギャップがある」関数は不連続で,不連続な関数は微分不可能です.
また,「穴が開いている」「定義されない点がある」関数も高校では不連続とするので,微分も不可能になります.

【問題3.1】


において微分可能となるように,定数の値を定めてください.
解説を読む
【問題3.2】



について,における連続性と微分可能性を調べてください.
解説を読む

【問題3.3】



について,における連続性と微分可能性を調べてください.
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【問題3.4】
 は自然数とする.関数において微分可能であるか微分可能でないかを理由をつけて答えよ.
(2014年大阪府立大学)
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