■キルヒホフの法則
 回路に流れる電流,与えられた端子間の電圧,未知の抵抗の大きさなどを求めるときに次のキルヒホフの法則が用いられます.
【キルヒホフの第1法則】
 回路内のどの点についても,「入って来る電流」の大きさと「出ていく電流」の大きさは等しい。
【キルヒホフの第2法則】
 どの閉回路についても「電圧降下」の合計と「起電力」の合計は等しい.
≪解説≫
【キルヒホフの第1法則】
○ この法則は,電流については"湧き出し"も"吸い込み"もないことを表しており,回路の中のどんな点でも成り立ちますが,例えば図1の点xのような場所で「入って来る電流」I1と「出ていく電流」I1が等しいのは当然のことです.
○ キルヒホフの第1法則が役に立つのは,右図1の点abのような接続点(分岐のある点)です.
 たとえば,点aにおいて入って来る電流をI1,出て行く電流をI2I3とおくと,キルヒホフの第1法則により
I1=I2+I3…(1)
が成り立ちます.
○ 電流I1I2I3の向きを右図1のように想定しましたが,実際に図ってみると例えば2[Ω]の抵抗に加わる電圧は上側よりも下側の方が高いかもしれません.すなわちI2は逆向きかもしれません.しかし,このような場合にはI2は計算結果として負の値になるようになっています.つまり,電流の向きは,初めの想定と同じ向きならば正の値,逆向きならば負の値になりますので,どちら向きに想定しても構いません.
○ 点aにおいて(1)の関係式が成り立つのならば,点bについても同様に方程式を立てることができるはずですが,
I2+I3=I1…(1’)
という式は,よく見ると(1)と同じものです.(点aから反時計回りに回ると,途中で分岐せずに点bにたどりつきます.このような場合,点aについて立てた方程式と点bについて立てた方程式は同じものになります.)
 この式の内容は正しいのですが,(1)を立ててさらに(1’)も書くと式がごちゃごちゃしてもつれてしまいます.連立方程式として解くときに式の個数が多過ぎると混乱してしまうことが多いので,(1)と(1’)はどちらか一方だけ書きます.
図1
【キルヒホフの第2法則】
図2
 右図2の青線で示した閉回路の時計回りの線に沿って電圧降下と起電力が等しいとおくと
4I1+2I2=6…(2)
が成り立ちます.
図3
 右図3の青線で示した閉回路の時計回りの線に沿って電圧降下と起電力が等しいとおくと
3I3−2I2=5…(3)
が成り立ちます.
図4
  右図4の赤線で示した閉回路の時計回りの線に沿って電圧降下と起電力が等しいとおくと
4I1+3I3=5+6…(4)
が成り立つように見えますが,もし(2)(3)を使うのなら(4)は使わないようにしましょう.(これら3個のうち2個あればよく3個とも書くのはよくありません.)
 実際,(2)+(3)のより(4)が得られ,(4)は何も新しいことを述べていないばかりでなく,式が多過ぎると連立方程式を解くときにもつれてしまって解けなくなります.
 この問題では,未知数はI1I2I3の3個で,方程式は(1)(2)(3)の3個でちょうど解けます.(4個あっても困るのです.)
 I2が2回登場しますが,これは問題なく,すべての閉回路について電圧降下が検討されるようにします.


【未知数が3個ある連立方程式の解き方】
 キルヒホフの法則を使って,上で検討したように連立方程式を立てると,次のような「未知数が3個」で「方程式が3個」の連立方程式になります.この連立方程式の解き方は高校で習いますが,ここで復習しておきます.
未知数が3個
方程式が3個
の連立方程式
I1=I2+I3 …(1)
4I1+2I2=6 …(2)
3I3−2I2=5 …(3)

まず,1文字を消去して未知数が2個,方程式が2個の連立方程式にします.
(1)を(2)(3)に代入してI1を消去して,I2, I3だけの方程式にします.
4(I2+I3)+2I2=6
3I3−2I2=5

未知数が2個
方程式が2個
の連立方程式
6I2+4I3=6 …(2’)
3I3−2I2=5 …(3’)

(2’)+(3’)×3により
I2を消去して,I3 だけの一次方程式にします.
+) 6I2+4I3=6
9I3−6I2=15
13I3=21
未知数が1個
方程式が1個
の一次方程式


I3について解けます.
I3=21/13=1.62
解が1個求まる


(2’)か(3’)のどちらかに代入してI2を求めます.
解が2個求まる
I2=−0.08
I3=1.62
(1)に代入してI1も求めます.
解が3個求まる
I1=1.54
I2=−0.08
I3=1.62
図5 ・・・ 次の流れを頭の中に地図として覚えておくことが重要
【この地図を忘れると迷子になってしまう!】
階段を3→2→1と降りて行って,
1→2→3と登るイメージ


※とにかく「2個2個」の連立方程式にするところが重要です.(そこら先は中学で習っているのでたぶん解けます.)

 よくある失敗は「一度に1個にしようとして間違ってしまう」「方程式の個数と未知数の項数が合わなくなってしまう」というような場合です.

 左の結果を見るとI2=−0.08となっており,実際には2[Ω]の抵抗においては,電流は「下から上へ」流れていることになります.
 このように「方程式を立てるときに想定する電流の向きは適当でよく,結果として逆向きになっているときは負の値になる」ことで分かります.
[問題1]
図のように,2種類の直流電源と3種類の抵抗からなる回路がある。各抵抗に流れる電流を図に示す向きに定義するとき,電流I1[A],I2[A],I3[A]の値として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

I1I2I3


 一般財団法人電気技術者試験センターが作成した問題
 第三種電気主任技術者試験(電験三種)平成20年度「理論」問7
 なお,問題及び解説に対する質問等は,電気技術者試験センターに対してでなく,引用しているこのホームページの作者に対して行うものとする.
[問題2]
図のような直流回路において,抵抗6[Ω]の端子間電圧の大きさV[V]の値として,正しいものは次のうちどれか。

(1) 2 (2) 5 (3) 7 (4) 12 (5) 15


 一般財団法人電気技術者試験センターが作成した問題
 第三種電気主任技術者試験(電験三種)平成15年度「理論」問5
 なお,問題及び解説に対する質問等は,電気技術者試験センターに対してでなく,引用しているこのホームページの作者に対して行うものとする.
[問題3]
図のように,抵抗を直並列に接続した回路がある。この回路において,I1=100[mA]のとき,I4[mA]の値として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 266 (2) 400 (3) 433 (4) 467 (5) 533


 一般財団法人電気技術者試験センターが作成した問題
 第三種電気主任技術者試験(電験三種)平成24年度「理論」問6
 なお,問題及び解説に対する質問等は,電気技術者試験センターに対してでなく,引用しているこのホームページの作者に対して行うものとする.
[問題4]
図のように,既知の電流電源E[V],未知の抵抗R1[Ω],既知の抵抗R2[Ω]及びR3[Ω]からなる回路がある。抵抗R3[Ω]に流れる電流がI3[A]であるとき,抵抗R1[Ω]を求める式として,正しのは次のうちどれか。



 一般財団法人電気技術者試験センターが作成した問題
 第三種電気主任技術者試験(電験三種)平成18年度「理論」問6
 なお,問題及び解説に対する質問等は,電気技術者試験センターに対してでなく,引用しているこのホームページの作者に対して行うものとする.
[問題5]
図のような直流回路において,電源電圧がE[V]であったとき,末端の抵抗の端子間電圧の大きさが1[V]であった。このとき電源電圧E[V]の値として,正しのは次のうちどれか。

(1) 34 (2) 20 (3) 14 (4) 6 (5) 4


 一般財団法人電気技術者試験センターが作成した問題
 第三種電気主任技術者試験(電験三種)平成15年度「理論」問6
 なお,問題及び解説に対する質問等は,電気技術者試験センターに対してでなく,引用しているこのホームページの作者に対して行うものとする.
[問題6]
図のように,可変抵抗R1[Ω],R2[Ω],抵抗Rx[Ω],電源E[V]からなる直流回路がある。次に示す条件1のときのRx[Ω]に流れる電流I[A]の値と条件2のときの電流I[A]の値は等しくなった。このとき,Rx[Ω]の値として,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
条件1:R1=90[Ω],R2=6[Ω]
条件2:R1=70[Ω],R2=4[Ω]

(1) 1 (2) 2 (3) 4 (4) 8 (5) 12


 一般財団法人電気技術者試験センターが作成した問題
 第三種電気主任技術者試験(電験三種)平成23年度「理論」問7
 なお,問題及び解説に対する質問等は,電気技術者試験センターに対してでなく,引用しているこのホームページの作者に対して行うものとする.

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