重要
ある関数に対してその逆関数が存在するためには,元の関数は1対1対応の関数(単射ともいう)でなければならない.
(解説)図1,図2のように,異なるには異なるが対応しているとき,これらの関数は1対1対応の関数であるという. 1対1対応の関数では,の値を定めると,これに対応するがただ1つ定まる. - 図1 - - 図2 - - 図3 - 図1,図2と図3を比較すると,図1は単調増加関数,図2は単調減少関数になっていて,の値を定めたときに,これに対応する元のの値はただ1つに定まるのに対して,図3は減少の区間と増加の区間とがあって,全体が谷形になっている.図3のようなグラフでは,の値を定めたとき(軸に平行な直線を引いたとき),グラフと2か所で交わるので,対応するの値が2つあるところが違う.この事情は山形(増加の後に減少になる)のグラフでも同様である.そこで,次のことが言える. |
重要
区間において連続な関数に逆関数が存在するためには,はこの区間において単調な関数(単調増加関数または単調減少関数)でなければならない.
(解説)連続という条件を外せば,例えば右図の関数 が無理数のとき が有理数のとき という関数を考えると,同じの値は登場しないから,逆向きの対応を作ることができる. が無理数のとき が有理数のとき このように,逆関数の存在条件として,単調増加または単調減少という条件が付くのは,連続関数の場合です. |
集合から集合への対応を表す右図のグラフにおいて,上の数字0, 1, 2はそのの値に対応しているの値の個数とする. 右の関数に逆関数が存在しない理由は2点に分けて示すことができる. (1) の値の内で赤字で0と書いた区間には,対応するの値がない(の「上への写像」「全射」になっていない)から,この区間のの値に対する元のの値がない. (2) の値の内で濃い青字で2と書いた区間には,対応するの値が2つある(「1対1の写像」「単射」になっていない)から,この区間のの値に対する元のの値が1つに定まらない. このように「上への写像」でない場合や「1対1の写像」でない場合には,の値に対する元のの値が決まらないから,逆関数が決まらない. これに対して,「上への1対1の写像」「全単射」になっている場合には,どのの値に対しても元のの値が決まるから,逆関数が定まる.
※ただし,「1対1の写像」については厳格に考えるが,「与えられた関数が意味を持つ範囲で,なるべく広い範囲で定義域を考える」という立場をとおて,「上への写像」「全射」については緩やかに考えてよいことが多い.
例
という関数は,となる値をとらず,実数全体の「上への写像」「全射」になっていないから,逆関数はないと切り捨てたりはしない.この関数が意味を持つなるべく広い範囲を考えて,としてからへの写像と解釈する.このように定義域と値域を限定すると,からへの対応,が得られます. を独立変数,を従属変数とする習慣に従って,文字を入れ換える場合は,になります. |
例
という関数は,のとき定義されないから関数ではないと切り捨てたりはしない.この関数が意味を持つなるべく広い範囲を考えて,としてからへの写像と解釈する.このように定義域を限定すると,からへの対応,が得られます. を独立変数,を従属変数とする習慣に従って,文字を入れ換える場合は,になります. 例
という関数は,の値に対応するの値を求めようとしても,となって,値を1つに定められません.このままでは逆関数は決まりません.例
という関数も,の値に対応するの値を求めようとしても,となって,値を1つに定められません.このままでは逆関数は決まりません. |
重要
ある関数に逆関数が存在するとき
(恒等写像) (恒等写像) が成り立つ. ※ が成り立つとき,をの逆関数(をの逆関数)と定義してもよい. |
用語
(定義域に属する)すべてのの値に対して,となる写像を恒等写像という.(自分自身に等しい関数のこと)(解説) 行ってから戻れば,元に戻るから明らか 例
の逆関数は例
の逆関数は |